ゲームレビュー『Orangeblood(オレンジブラッド)』 No.09

ゲームクリア後に深く掘り下げながらネタバレなしで丁寧に解説していくゲームレビュー。今回のタイトルは『Orangeblood』です。 タイトル画像

2020年1月14日にPLAYISM、SteamにおいてPC版が発売されたRPGで、開発はGrayfax Software。RPGツクールMVで制作された異色の作品です。

ゲームの紹介

世界観、ストーリー

日本は南北に分断され、アメリカやロシア、中国、マフィアやヤクザなど様々な勢力が入り乱れる混沌とした状況の中、沖縄近海に浮かぶ人工島「ニュー・コザ」が舞台。連邦刑務所にとらわれていた主人公Vanilla(ヴァニラ)が、釈放の見返りとしてニュー・コザの深部にある閉鎖区画への侵入ルートを確保する任務を請け負うところから物語はスタートします。

イベントシーン

管理を放棄された施設に不法移民が勝手に住み着き発展したニュー・コザ。様々な人種が混在する混沌とした街で、マフィアの縄張り争いが繰り返されています。活気と快楽、銃弾と不条理が交差するような世界の中でDJやカンフーなど印象深い特徴を持つ4人の可愛らしいデザインの少女たちが激しい闘争と銃撃戦を繰り広げる物語です。また、こうしたメインストーリー以外にも、街の住人などから請け負うサブクエストもあります。

イベントシーン2

グラフィックは繊細なピクセルアートで細部まで細やかに書き込まれ、香港の古い町並みのような雑多でありながら馴染みやすい魅力的な世界が表現されています。こうした世界観を盛り上げるBGMも特徴で、ゲームの雰囲気を一層高めています。ちなみにサントラも一緒に発売中です。

ゲームシステム

ターン制のコマンド式バトルにハックアンドスラッシュを組み合わせたようなシステムで、マップ上にはクレートと呼ばれる宝箱が数多く点在しており、この箱や敵からのドロップで装備を集め最適な組み合わせを模索しながら戦闘に臨む、というのがこのゲームの一番のゲーム要素になっています。

宝箱開封

武器はすべて銃に統一され、アサルトライフル、サブマシンガン、ショットガン、アンチマテリアルライフルの4種類があり、属性もファイアー、クリオ、ショックの3つがあります。さらに耐性ダウンや状態異常付与など様々な能力が付いているほか、同じ名称の武器でも攻撃力や命中率など様々な違いがあり、ランダム性の高い要素になっています。

防具は靴とギアの2種類で、どちらも武器と同じ様に様々な能力が付与されており、防御性能だけでなく、攻撃力等を上げるものもあり、どれを装備するかでキャラクターの性能は大きく変化します。

装備選択

戦闘はシンボルエンカウント方式で、マップ上では主人公は銃弾を撃つことが可能で敵のシンボルに銃弾を当てることで敵を一時停止させることが可能です。この止まっている最中に接触することで有利な状況から戦闘を始めることが出来ます。一度倒した敵やクレートは、マップを切り替える度に復活する仕様で何度でも際限なく戦闘とクレート漁りが出来ます。

しかし、クレートを開けるためには敵を倒した際のドロップアイテムとして入手できるフラグメントキーと言う鍵が必要で、通常のクレートは1つで開きますが、まれに通常よりもレア度の高い装備が入っている特別なクレートというものが出現し、このクレートはフラグメントキーが10個必要になります。

バトルシステム

前述の通りターン制のコマンド式バトルでオーソドックスな形をとっていますが、武器が銃であるためにやや独特なシステムもあります。

単体を集中攻撃するアサルトライフルや全体をランダムに攻撃するサブマシンガンなど武器の種類ごとに特徴が異なりますが、すべての銃には弾倉が設定されていて、弾が尽きるとリロードをする必要があります。ターンを消費することで通常のリロードをすることも可能ですが、装備によっては治療効果や敵のターゲットを引きつける効果などを発揮させるリロードも可能です。その際にはSPというポイントを消費します。

リロード

このSPを消費することで、4人のキャラクターが持つ、それぞれの固有スキルを使用することも出来ます。特に印象的なのがMachikoの固有スキル「トランジョン」で、いわゆるパッシブスキルになっていて戦闘開始とともに発動され、SP毎ターン増加&攻撃力アップの「ヒートアップ」とHP毎ターン回復&防御力アップの「チルアウト」を切り替えながら戦うことが出来ます。

トランジョン

一級品の輝きを放つ「Orangeblood」

こだわりの塊「ニュー・コザ」

ストーリーは舞台であるニュー・コザを中心として進みますが他に街はなく、ニュー・コザとダンジョンとを往復することで進行していきます。街が一つだけという部分はゲームとして寂しさもありますがその分グラフィックは細部まで詳細に描かれ、生きた街を巧みに表現しています。また、社会の裏側を描いたようなゲームの題材に反し、キャラクターたちは可愛らしい少女のデザインで描かれていますが、このテーマをこのキャラでやるの?という意外性が、ニュー・コザのカオスな側面を更に補強し、より魅力のあるものにしていると思います。

屋上

街中では椅子に座ったり、プールに入ったり、食堂では食券を買ったり食器を戻したりと様々な表情を見せてくれます。ショップや食堂、ホテルや裏路地など様々な施設がひしめき合い、雑多で複雑な街の構造ですが、細やかなグラフィックと階段や車などの移動手段を上手く接続することでニュー・コザの街の雰囲気を保ちながらアクセス性をきちんと確保していると感じました。

階段

古臭さを払拭する古き良きバトルシステムとゲーム性

戦闘はオーソドックスなスタイルではあるものの、切替可能なパッシブスキルや弾倉のリロードと補助スキル、銃の種類によるターゲット対象の違いなど、よくある剣と魔法の世界の戦闘から武器を銃に持ち替えました、というだけで終わらせること無く、いくつもの工夫、そして何よりも無数の武器や防具の中から最適な組み合わせを選び戦闘に臨む要素がターン制バトルの古臭さを上手く払拭していると感じました。

大ダメージ

ゲーム序盤からクレートは開けきれないほど登場し、様々な種類の武器防具がとめどなく手に入ります。所持枠が武器50個と靴とギアが合わせて50個までと上限があり、すぐに所持枠いっぱいまで溜まってしまいます。しかし、ダンジョン内でもリサイクルマシーンという装備を売却する装置が点在しており、さらに所持枠を超えるとアイテム画面から売却が可能になるなど店戻ること無く、ただひたすら集め続けることが可能になっています。

リサイクルマシーン

こうした親切設計のおかげで、ひたすら敵を倒し、ひたすらクレートを開け、ひたすらに装備を集める事が可能で、加えて各武器防具の組み合わせによっては桁違いのダメージを出すこともあり、長時間の装備探索やその報酬として目に見える形ではっきりと効果が現れる部分などはハックアンドスラッシュの楽しさををより一層加速させていると感じました。

気になるポイント

輝きに隠れているほころび

ハックアンドスラッシュの要素が存分に詰め込まれたゲームですが、各装備は大量にドロップするもののバリエーションの幅がやや狭く、戦略性を生み出すまでには至っていない印象を受けます。最も攻撃力の高い武器を選び、仲間キャラのyazawaやJackieのスキルを使用し火力でゴリ押すのが最適のゲームであり属性や状態異常も重要な要素ではあるものの攻略において必須なものにはなっていません。

つよつよの武器
序盤で手に入れた強い武器、すべての雑魚がほぼ一撃で倒せるようになった。

敵のバリエーションやパターンもそれほど多くなく、武器やスキルを含め、決められたパターンをただ繰り返すだけの戦闘に終止しがちです。レアな強い装備が手に入り、装備の組み合わせが上手くハマったときは文字通り桁違いのダメージが出せるようになり、そういった部分での爽快感はありますが、戦闘の難易度は極端に下がり、以後の戦闘はただの作業と化します。

楽勝

ゲーム開始直後の印象では様々な武器防具が手に入り武器の入手と選定に大きな楽しみがありますが、ゲームを進行すればするほど似たような武器防具が増え続け入手する喜びとともに捨てる面倒臭さも大きくなっていきます。

売却シーン

戦闘画面ではMachikoの使うトランジョンの演出がフラッシュを多用した点滅の演出で、視覚的に刺激の強いものになっています。視覚的な部分なので個人差は大きいと思いますが、人によってはプレイしづらく感じるレベルであるかもしれなのでプレイ動画等を見て判断したほうが良いかもしれません。2020年1月15日のアップデートで緩和されたようですが戦闘開始時には毎回入る演出なので個人的にはまだ気になるレベルであると感じました。

フィールド画面ではティルシフトというオプションからON/OFFの設定が可能な画面効果があり、ONにしておくと画面の上部と下部にぼかしのようなエフェクトがかかります。しかし、各施設を表す文字にこのエフェクトがかかると文字が読みづらくなったり、ダンジョン内では敵のシンボルが極端に見えにくくなったりと、場所によりどうしてもOFFにしたい場面が多くあります。ゲームの雰囲気を底上げする魅力的な演出ですが、無駄になってしまっているのは残念なポイントです。

見えにくいシンボル

またフォント自体もデザイン性のあるものが使われおり、カッコよさがある反面、漢字やルビ、装備の名前など見にくさもあります。また武器防具の名前はどれも英語で表記されており大量に手に入る武器防具の一覧はフォントの見づらさと相まって区別と管理の難しさがあります。

序章から終章へ

世界観やキャラクターたちの魅力に心を掴まれ、これからどんな物語が始まるのだという期待でいっぱいの中ゲームは始まりますが、その結末は意外なほど早くやってきます。物語の起承転結があるとするなら、あいだの2つ承と転がなく、起から結へ直行していて、物語がいよいよ大きく動き出すかというところでクライマックスへ突入していき、気づいたときにはエンディングを迎えています。

イベントシーン3

ゲーム冒頭からキャラクターたちが見せる掛け合いや世界観がもたらす雰囲気に対し、実際の物語のボリュームには不釣り合いな面があり、期待が大きかった分、その落差が余計に残念に思われます。

総評

良い点、悪い点

良い点
・コンセプトと完成度のある世界観
・魅力の詰まった街ニュー・コザ
・アイテム探索と装備の選択

悪い点
・短いストーリー
・奥行きのないハックアンドスラッシュ要素
・単調さに行き着いてしまう戦闘バランス

まとめ

世界観は素晴らしく、キャラクターデザインも魅力的、街のデザインは秀逸でハックアンドスラッシュを取り入れたターン制バトル。このゲームには数多くの魅力が詰め込まれ、ゲーム開始から数時間の間は間違いなく大きな魅力を輝かせているゲームです。そうした魅力が大きい分、ゲームに対する期待の度合いも大きくなりますが、欠点や好みの分かれそうなポイントも多く、最初に抱いたゲームへの期待に答えられているとは言い難い部分があります。

ニュー・コザ

ゲームのコンセプトとジャンルの組み合わせやデザインの完成度は高いゲームですが、何れにせよボリュームの不足と、戦闘バランスの物足りなさがこのゲームの弱点であるように思います。それでも他のゲームにはないオンリーワンの魅力を持っていることは間違いないゲームで、このゲームの持つ魅力に少しでも惹かれた方なら値段分の価値を感じると思います。

イベントシーン4

ストーリーは9時間ほどでクリア、クリア後の要素として強敵の待ち構える高難易度ダンジョンがありますが、そこへ挑むための下準備はかなり入念に必要でこのダンジョンをクリアするまでと考えるともっと時間は掛かると思います。

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